とある遠足サークルがあった。
社会の喧騒に疲れた大人達が「子供心を思い出して楽しみたい」という想いでできたこのサークルは、立ち上げ当初は緩い雰囲気で運営されていた。
しかし、メンバーが増えるにつれ様々な問題が起こるようになった。
遅刻やドタキャン、サークル内での窃盗、出会い目的での冷やかし参加や挙句の果てには宗教やマルチの勧誘目的でサークルに近付こうとする者まで現れた。
問題が起きる度、サークルにはルールが追加されていった。
週2回以上の参加を強制、朝5時の集合を徹底、既存メンバー3人以上の承認が必要、指定の道具を強制。
いつの間にか厳しいルールでガチガチに固められた遠足サークルにはかつてのような緩く楽しむ雰囲気はなくなり、規律と伝統を重んじた由緒正しき遠足ガチ勢の集まりになっていた。
中でも「おやつは500円まで」というルールは特に人々を熱狂させ、限られた制限の中で如何にテーマを持ったおやつを揃えるか、ということがある種の自己表現にもなっていた。また同時に、そのルールを破るものには軽蔑の目が向けられた。
ある日の遠足。
仲良く遠足を楽しんでいた4人が道中で休んでいるとき、事故で全員のおやつが混ざってしまった。そこには2038円分のおやつが拡がっていた。
4人は瞬時に状況を理解した。
「この中に、おやつを500円より多く持ってきた奴がいる」